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近年の格闘ゲーム業界の少年漫画性について

 前回のブログでも記事にしたように(下記URL参照)、近年の格闘ゲーム業界は、ときど、ウメハラという二人プロゲーマーを中心に少年漫画さながらの盛り上がりを見せている。

spansees.hatenablog.com

 おそらくこの記事はアクセス数が伸びると思う。

なぜなら現在のストリートファイターⅤのプロゲーマーたちが織り成す物語を、まるでフィクションの少年漫画のように楽しんでいる視聴者が多数いるはずだからだ。

 

 現在の世界を取り巻く格ゲーシーンは、遡れば一人の中学生、梅原大吾格闘ゲームに魅了され、ゲームセンターに入り浸るところから始まる。

 梅原という男が語られる時、必ず言われるのは、当時のゲームセンターといえば社会不適合者が逃げ場を求めて集まるところだったという昔話だ。当時の梅原も、義務教育時代から学校というものに違和感を感じていたと自著で述べているように、当時からやはり社会にはあまり馴染まない性質を持っていた。そして吸い込まれるようにゲームセンターに身を投じていた。

 そんな梅原は、大人ばかりのゲームセンターで真摯にゲームに取り組み、なんと14歳にして日本一になる。高校生の頃には全国放送のテレビ番組で特集が組まれるほど話題性のある大会で世界大会を優勝。それからもあらゆる大会で勝ちまくった。

 

 余談だが、今から10年ほど前、2D格闘ゲームから縁遠かった僕でもやはりウメハラといえば世界最強の格闘ゲーマーであり、ゲーム界の神であるという認識だった。

当時からウメハラの存在はもはやゲーム業界を飛び出すほど神格化されていたという一例だ。

さらには、当時のウメハラを筆頭とする5人のトッププレイヤーは格ゲー5神と呼ばれ、他の追随を許さぬ圧倒的なプレイで人気を博していた。また、この5人は後に全員が企業からスポンサードされ、社会不適合者と呼ばれた日本格ゲー業界が誇る「プロゲーマー」のパイオニアとなる。

 

 17歳の世界大会優勝から、梅原は格ゲー界の神の名を欲しいままにしていたが、22歳の時にゲームに人生を賭けることに挫折し、麻雀の世界へと移行することとなる。

麻雀の世界でも挫折を味わい、25歳の時に梅原は介護職に就く。格闘ゲームをやらせれば世界に名を轟かせる神であるにも関わらず、当時の梅原が介護職に就かざるを得なかったのは日本教育の非常に恐ろしい価値観の共通化であるところは間違いないが、それはまた別の話にしよう。とにもかくにも梅原は介護職員として数年の間、勝負の世界から姿を消した。

 

 2009年、梅原が介護職員として2年目を迎えた頃、梅原を神たらしめていたゲームタイトル「ストリートファイター」の新作が発売。梅原は友人の誘いに乗り、ゲームセンターに再び通うようになると、瞬く間に全国ランキングで1位になる。

しばらくして、梅原は世界大会に招待されることになるのだが、そこでも優勝。さらには、世界最大の格闘ゲーム大会EVOLUTIONでは、2009,2010年と2連覇。梅原はこの一連の流れで企業からスポンサードを得て、日本人初のプロゲーマーとなる。

 

 一方で、格ゲー5神の一人、東京大学に在学中だった「ときど」も、梅原の後を追う形でプロゲーマーとなる。また、格闘ゲーム業界の少年漫画性という今回のタイトルの記事を書くにあたり、ときどの存在は非常に重要だ。なぜならこの漫画の主人公は、梅原ではなくときどだからだ。

 

 ときどは、合理的ゆえに勝負弱いという印象が一般的だった。おそらく格闘ゲームが合理性のみを追求するゲームであればときどの勤勉な性質を持ってすれば誰も敵わないほどのプレイヤーだっただろうが、この世界は違った。

トッププロの梅原をはじめとして、本当のトップ層が何を考えているのか全くわからない。まさしく格ゲー業界は獣道そのものだった。そこではときどの勤勉な性質はむしろ仇となり、強いは強いけど最強ではないという雰囲気が立ち込める結果となってしまった。

 

 ときどがプロになったのは2010年頃のことだが、それから数年の間ときどは研鑽を積み続ける。そして2017年、転機が訪れる。

いかにときどの本質が合理的で意外性が無い動きだとしても、2017年にもなると、既にときどは格ゲー業界でバケモノの領域に到達していた。まさしく努力によって自分の弱点を克服し、本来持つ合理性と勤勉さという特殊能力を掛け合わせてEVOLUTION2017で優勝したのだ。

 

 この年のEVOLUTIONは、おそらく格ゲーファンにとっては生涯忘れることが出来ないほど劇的な展開だった。

当時、世界最強と言われたアメリカの若手プレイヤー「punk」があらゆる大会でトッププロたちを蹂躙し、優勝トロフィーをかっさらっていた。彼はおそらく今でも人間性能だけをとれば梅原やときどを大きく上回るほど人間離れした反射神経を持っており、その年のEVOLUTIONも2000人以上が参加する2本先取のトーナメントで、1セットも落とすことなく10連勝以上の勝ち星を積み重ねて決勝まで駒を進めた。

 

 ちなみにストリートファイター5というゲームは、安定性という面では各所でクソゲーと呼ばれるほどに実力が反映されにくく、梅原を含む世界のトッププロが軒並み成績を落とすようなゲーム性である。

にもかかわらず、punkは無敗のまま決勝に到達するという、前評判ですら予想が出来ないほどの結果を出した。これは逆説的にpunkが圧倒的なまでに世界最強プレイヤーであることを表しており、もう誰もpunkに勝てるわけが無いという雰囲気が漂っていた。

 

 しかし、みなさんご存知の通り、敗者復活戦から死闘を重ねて勝ち上がってきたときどが決勝でpunkに勝利したのだ。

この時、誰もが現実にこんな少年漫画のようなことが起こるのかと驚き、感動したはずだ。

 

 例えば高校野球の世界はどうだろう。甲子園で優勝するのは大方それまでのトーナメントを圧倒的に勝ち進んできた学校ではないだろうか。テニスもバスケも何もかも、現実世界では強い方、才能がある方が勝つ。

しかし、才能を覆すほどの圧倒的展開を見ることができるものが、この世には2つだけある。それは、少年漫画と、格闘ゲーム業界だ。

 

 格闘ゲーム業界ではそれこそ日常茶飯事と言って良いほど、逆転が起こる。それはおそらくゲーム上の性質の問題、有利不利の状況が移り変わりやすいことからもたらされるのであろうが、とにかく視聴者にとってみれば誰が勝つのか全くわからなくて面白い。

 

 そして、それほど逆転ばかりが起こり、結局誰が強いのか分からないのかと言えばそうではない。10本先取の長期戦をやると、梅原大吾を倒せるプレイヤーは未だに存在しないのだ。

 

 昨日の梅原vsときどの10本先取の勝負でも、やはりときどは梅原に敵わなかった。今回の勝負でときどが勝てば、この漫画は一つ話が終わるところだったと思う。しかしながら今回も梅原が圧倒的な勝利を見せ、物語がまだまだ続いていくことが決まった。

 

 ときどは今後もますます実力をつけ、梅原の立場を脅かすだろうが、それ以外にも魅力的な登場人物が山ほどいるこの業界、今後も全く目が離せない。